人生のパートナー選びを断念した夜に、私はマスターに出会った
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記事:青子さま(ライティングゼミ)
あなたは、マスターに会ったことがあるだろうか?
マスターとは、生まれた時からあなたのことをずっと見守り、導いてくれる人生の指南役だ。
迷ったときに正しい選択ができるようアドバイスをしてくれたり、とっさの危険をさりげなく回避してくれたりする、そんな頼もしい存在だ。
どんな人にも、お抱えマスターがついているのだが、残念ながら、多くの人は、自分のマスターに出会えずにいるのだそうだ。
または、存在に気付いても、確信が持てずに否定してしまうので、マスターの力にあやかることが出来ないという。
その話を聞いたとき、私もマスターに出会えずにいるうちの一人だと思った。
だいたい、そんな存在すら知らなかったのだから、マスターに頼ろうと思ったこともなかった。
これまで何か問題があった時は、自分の力で解決しようと頑張ってきた。
重要な選択をするというのは難しいものだが、私は年齢を重ねるにつれ、「選択する力」がついてきたと自負していた。
学校でも、社会人になって仕事をしていくうえでも、論理的思考が大切だと教わってきたせいで、自然にロジカルにものを考えるようになっていった。
重要な決断をするときは、できるだけ多くの観点から比較検討をして選択していくやり方に慣れ親しんでいた。
「私は数あるプランの中からAを選びました。なぜなら~という理由があるからです」
こう説明できると、自分もすっきりするし、相手も納得する。
選択するという行為は、こういう裏付けが必要だと考えていたのである。
プライベートでさえ、時に比較検討表を作って頭の中を整理してきた。
たとえば、旅行に行く時だって、候補に上がっている各種ツアーや個人旅行のプランを書き出して、細かいところまで比較した。
日程、旅程、金額、条件、このプランを選ぶメリット、デメリット。
項目ごとに書き出していくと、立派な比較検討表が出来上がる。
年に一度の貴重な旅行なのだから、後悔はしたくない。こうやってロジカルに検討することが最高の旅になるのだと信じていた。
確かに、事前に各スペックを慎重に比較したことで、期待通りの満足度の高い旅になった気がする。
しかし、だ。
この私のやり方では、対応が難しい分野があった。
恋愛である。
恋愛となると、私が使ってきた「選択する術」は全く通用しなかったのである。
恋愛は思考でするものではないから、論理的なアプローチは役に立たない。
あれは、20代も半ばになり、そろそろ結婚というものも現実的に意識するようになってきた頃だった。
当時は、いろいろな場所に出かけていたから、出会いのチャンスも多かったし、お誘いもそれなりにあった。このフィールドのどこかに素敵な男性がいるはずだ。
しかし、いざ、現場に身を置いてみると、自分に合う男性が分からない。
生身の血が通った男性たちを比較検討表にするほど、私も下世話ではないし、そもそも比較検討するほどモテたわけではないから、ひとりひとりと向き合っていくことが大切だ。
ご縁があった方とどうステップを踏んでいくのか、どんな人とデートをするか、そんなひとつひとつの選択が難儀なことだった。
もちろん「出会った途端に胸の中でカランコロンと祝福のベルが鳴った!」とか「目と目が合った瞬間に電流が走った!」とかそういう運命の出会いがあったなら、そのまま迷いなく進めたであろう。
でも、すべての恋愛がそんな形をとるわけではない。むしろ、おおかたの恋愛はそれとは真逆で、少しづつ恋心を育てていくようなプロセスを辿るのではなかろうか。
最初はピンと来ないけど、徐々に盛り上がっていく恋愛もあるだろう。
お互いを深く理解しないうちから、外見や表面的な条件だけでお断りしてしまうのも、もったいないような気がする。
そうは言っても、ピンと来ない人とデートを重ねるのは苦痛でしかない。
私は完全に頭でっかちになって、ぐるぐると思考を巡らせては、ため息をついた。
自分にふさわしい人はどこにいるのだろう。今まで出会った男性を振り返っても、どういう人と相性がいいのかよく分からなかった。
そんな頃、ある男性と再会した。
学生時代にアルバイト先で知り合った同世代の仲間が集まる機会があった。
ただ近況を話したり、一緒に働いた頃を懐かしむことが目的で、恋愛へ発展することなど全く考えられない会だったから気楽だった。
その時、たまたま隣に座ったのは、アルバイト時代には少々、遊び人の印象があって、自分とは住む世界が違う人だと思っていた男性だった。
社会人になって久しぶりに会うと、その印象は消え、地に足がしっかりついているような感じがして、昔より格段に話しやすくなっていた。
それから、友人として付き合うようになった。
二人で何度か会っていると、友人から恋愛に発展していくような兆しが生まれてくるわけなのだが、私の恋愛センサーはうまく働かない。
気が合うような気もするし、そうでない気もする。
好きなような気もするし、そうでない気もする。
はて、自分はこれからどうしたいのか……。
うーむ、うーむ。
どんなに自分に問いかけても、さっぱりわからなかった。
考えても、考えても、答えは出ない。
私の思考は完全にストップした。
仕事や他の悩みでは、自信を持って選択できるというのに、恋愛に関しては自分の判断に自信が持てないのは何故なのだ。
そして、疲れ果てた私は、降参した。サレンダーだ!
もうこの問題を自分で解決しようとするのをやめよう、と思った。
そして心の中で叫んだ。
「もう、お任せします! 夢で答えを教えてください!」
私はあの時、いったい誰に向かってその言葉を言ったのだろう。
恋愛の神様か。守護霊様か。
はたまた、ご先祖様か。
もうなんでもいいから、どこかの誰かにヒントをもらえないかと思ったのだった。
こうして、やけっぱちモードでサレンダーした夜、私は不思議な夢を見た。
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雑居ビルの廊下を恐る恐る歩いている私。
どうしても地下にある部屋に入らなくてはいけないのだ。
勇気を振り絞って、地下室のドアを開けて中に入る。
そこは薄暗く、寒い。まるで霊安室のような気がした。
そこに老婆が横たわっている。銀色の長い細い毛がだらしなく床に散らばり、顔には表情という表情はない。皮膚はカサカサに乾燥していて、薄汚い粗末な衣服が身体を覆っている。
生きているのか、死んでいるのかもわからないこの老婆の手と握手をすること。
それが私の課せられたミッションだった。
まるで肝試しに臨むような気持ちで、私は恐る恐るその老婆の手に触れる。
その次の瞬間、老婆は突然、生気を取り戻すのだ。
みるみるうちに若返り、艶のある肌、こしのある黒髪、真っ白なワンピースを纏う女性が現れた。薄汚い老婆から、美しく若々しい女性に変身したのだった。
美女はそっと瞳を開き、私の方を見ながらこう言った。
「怖がっていないで、その先に一歩進みなさい。あなたの目を曇らせているのは恐怖よ。だから表面上のことしか見えないの」と。
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そこで、目が覚めた。
すごく鮮明で生々しくて、とても夢とは思えなかった。
「今のは、いったいなんだったんだろう……。これを啓示というのだろうか」
しばらく身動きが取れないほどに、印象深い体験だった。
この夢の意味は、はっきりとは分からなかったが、その夢を見たことで、迷いが吹っ切れて気持ちが固まった。彼とちゃんとお付き合いをしてみようという気になったのだ。
それは理論的な判断ではなかった。
「なんとなくのひらめき」
「直感」
「インスピレーション」
そんなわけのわからないものに、私の恋路を任せてみることにした。
その数年後、私はこの男性と結婚した。
あの時、あの夢を見ていなかったら、老婆から美女に変身した女性からあの一言をもらっていなかったら、私は主人と結婚していなかったんじゃないかと思う。
それからの私はこのサレンダー作戦をちょくちょく発動している。
頭で考えても答えが出ない時には、自分の中から湧き上がってくる直感やひらめきに従うことにしているのだ。
このやり方を手に入れて、私を格段に生きやすくなった。そして、以前よりも色々なことがうまくいくようになった。
誰の中にも、マスターがいる。
マスターからのメッセージは、直感となって、感情となって、あなたに呼びかけるだろう。
私が体験したように夢の中でメッセージをくれるかもしれない。
もしくは、ふと開いた本の一節かもしれないし、明日会う友人の一言となって届けられるかもしれない。
それをキャッチできるかどうか。
信じられるかどうか。
従う勇気があるかどうか。
思いもよらないアイディアだったり、恐れ多くて逃げたくなるような選択肢を突きつけられるかもしれない。
でも、それを選択する時は、比較検討表を作ってロジカルに決断するよりも、何倍もワクワクするだろう。
人生はワクワクすることが多い方がいいに決まっている。
だから、私は、ワクワクという名のマスターに身を任せる。
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